今井三絃店で糸巻きの調整をしてもらいました

本日は京都の祇園エリアにある今井三絃店へ。津軽三味線の糸巻きが緩かったため、今井三絃店の五代目店主・今井伸治さんに調整をお願いしており、修理が終わったため引き取りに行ってきました。

京都市の祇園エリアにある三味線屋「今井三絃店」

京都祇園の三味線屋・今井三絃店

京都・祇園エリアにある今井三絃店は、明治38年(1905年)から日本の伝統芸能を支えてきた三味線屋。店主の今井伸治氏(五代目)は三味線作りの工程がすべて行える職人であり、過去に三味線製造分野・修理技術分野において全国で5名が調査対象となった「国選定保存技術保持者」の認定候補の技術者です。

現在は文楽の義太夫三味線、都をどり・祇園をどりの三味線のメンテナンスや修理全般を引き受けられており、演奏家からの信頼が厚く、細やかな要望に応えてくれます。なかでも義太夫三味線に欠かせない「水張り」(皮を水に浸してから張る技術)ができる職人として、関西では唯一無二の存在。まさに匠の技をもつプロフェッショナルです。

三味線の糸巻きの調整は、演奏しやすさに関わる大切な要素

もともと津軽三味線の3の糸巻き(写真中央)が緩かったのですが、今井さんの調整により、しっかり糸巻きが止まるようになりました。

津軽三味線の糸巻き

修理依頼のときに自分では気づかなかった1と2の糸巻きについて、「こちらもちょっと削りが甘いので一緒にやっておきますか」とご提案され、あわせて調整をしてもらうことに。その結果、すべての糸巻きが使いやすくなりました。

津軽三味線の黒檀の糸巻き

このように、3本の糸巻きが綺麗に削られており、職人の丁寧な手仕事が感じられます。

津軽三味線の黒檀の糸巻き

糸巻きがしっかり止まるか、調弦(チューニング)しやすいように回るかは、三味線の演奏に大きく影響します。

たとえば、曲を演奏しているときに糸巻きがゆるむと、調弦がズレて、開放の響きが不協和音のように気持ち悪くなります。また三味線に張られている糸は常に伸び縮みをしているため、曲の間奏部分やフレーズの合間で余裕があるときに糸巻きを回して調弦するのですが、そのときに糸巻きがしっかり回って止まらなければ、微妙な音程のズレが修正できないのです。

さらに、糸巻きが不安定だと「演奏中の心の余裕」にも影響を及ぼします。ストレスを感じたり、不安を抱えながら演奏することになったりと、あまり精神的にもよくない状態になってしまいます。万全の体制で演奏に臨むために、糸巻きの調整は必須であり、三味線奏者の生命線のひとつと言っても過言ではありません。

お稽古や練習と同じくらい、楽器のメンテナンスも演奏にかかわる大切な要素。ときどき三味線を職人さんのところに持っていき、いたわってあげることで、三味線への愛着がさらに湧いてくるというものです。

三味線職人・今井伸治さんの糸の巻き方を分析してみる

日々たくさんの三味線を扱っておられる職人さんが、あたりまえのように自然にされていること(作法や取り扱い)は、自分にとってすごく新鮮だったりします。糸巻きの調整や、棹の上場通し(カンベリ直し)の修理を依頼して三味線を受け取ったとき、いつもとは異なる部分があると、それが新たな発見になるんですね。今回は糸の巻き方に注目してみました。

2と3の糸は引っかけて巻く

津軽三味線の糸巻き

私は普段、2の糸を丸結びにして玉を作り、絶対に穴から抜けないようにしているのですが、今回、糸巻きを修理するにあたって糸を外す作業があると想定し、普通に糸を巻いて修理に出しました。そして戻ってきた三味線を見ると、今井さんは2の糸の先端を少し引っかけて、それを次の周回の糸で押さえこむことにより、糸が緩まないようにされていました。3の糸も同じように巻かれています。

春の「都をどり」や秋の「祇園をどり」で三味線の絹糸を毎日(あるいは幕間のタイミングで)変えられている今井さんが、おそらく無意識でされたのだろうと推測しますが、糸の巻き方に手馴れた感じと、あたりまえに行われていることに、長年の経験とか代々受け継がれてきたものとか深い意味を感じました。

糸の巻き方がすぐにわからないときは、糸をほどきながら、どうなっているかを確認して、自分で再現するに限ります。

津軽三味線の糸巻き

何度か失敗しつつ、試行錯誤すると、ようやくスムーズにできました。職人さんに三味線を預けると、こういった無言のメッセージというか教えがあるから面白いですね。

1の糸の先端は玉になっており、穴の位置と残りの糸の長さを考慮して、左右を行き来しながら上手に巻かれていました。これも簡単そうに見えて、やってみると意外に難しい……。

職人さんに感謝。

津軽三味線の糸巻き
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