京都・法乗院で演奏させていただきました【第6回 下鴨音楽祭】

2025年11月9日(日)、京都市の下鴨エリアで開催された「第6回 下鴨音楽祭」に出演しました。その日のことを振り返りながら書いていきます。

雨の中のスタートとなった第6回 下鴨音楽祭

今年の下鴨音楽祭は雨! 午前中から降り続き、やむ気配はまったくなし。

そんな雨の日のしっとりした雰囲気の中、第6回 下鴨音楽祭が静かに幕を開けます。

三味線にとって雨は大敵であり、湿気で音が鳴り響きにくくなりがちです。とはいえ、三味線の皮を当日に張り替えることはできません。さらに絹糸が湿気を吸って伸び縮みすれば、せっかく合わせた調弦もズレてしまいます。師匠からの教えをもとに、できる限りの準備をして臨みました。

今回の会場は法乗院。高野山真言宗の由緒あるお寺です。

京都の下鴨エリアにある高野山真言宗 法乗院

建物の中に本堂があり、普段は立ち入れないスペースに身を置いて演奏させていただきます。

第6回 下鴨音楽祭の出演レポート

第6回 下鴨音楽祭にて法乗院の本堂で演奏する竹山流 津軽三味線奏者 水山

定刻どおり15時から水山の津軽三味線ライブが始まり、トークを交えながら演奏しました。

第6回 下鴨音楽祭にて法乗院の本堂で演奏する竹山流 津軽三味線奏者 水山

演奏した曲

  • 津軽じょんから節(新節)
  • 十三の砂山
  • 三味線よされ
  • 三味線じょんから
  • 曲弾き

竹山流 津軽三味線の魅力を30分の枠で伝えられるよう、悩みに悩みぬいて、この5曲にしました。

会場がお寺ということもあり、青森県の津軽半島北西部(十三湖)で昔から伝わる盆踊り唄で、死者の魂を鎮める鎮魂歌でもあるとされる「十三の砂山」の曲をセレクトして演奏しました。

第6回 下鴨音楽祭にて法乗院の本堂で演奏する竹山流 津軽三味線奏者 水山

20~30名ほどの方々が真剣に耳を傾けてくださり、その期待に応えるべく、一生懸命に弾きました。

4曲を弾き終えた時点で残りが11分とのことでしたので、曲弾きは7~8分で収まるように構成して演奏しました。

終演後は音楽祭を楽しむ

終演後は着替えと片付けをして、法乗院ステージで行われたライブをじっくり楽しませていただきました。

白井清さんによるテオルボの演奏は、まるで中世にタイムスリップしたかのような音色でした。音の中にヨーロッパの雰囲気、匂いのようなものが感じられました。ギターという楽器が生まれる前の、リュートに近しい響きと豊かな低音のバランスが絶妙で、弦楽器の歴史の一端を見た気がします。初めて聴く楽器だったこともあり、とても新鮮で、今まで知らなかった音色が自分の耳と体に(脳にも)記憶されました。

岡田旭洋さん(法乗院の岡田翔廣ご住職)による那須与一を題材にした筑前琵琶の弾き語りは、物語の盛り上がりにあわせて激しく、ときに静かに切なく演奏される部分があり、迫力と切なさを併せ持つ津軽三味線と通じるものが感じられました。低くうなる低音と、繊細な高音のフレーズ。ゆらぐ音色が美しく、心の奥に響き渡りました。どれだけのお稽古を積み重ねたら、このような演奏が実現できるのか……。日々の鍛錬、信念を持って年月をかけて取り組んできた積み上げを、演奏から感じざるを得ませんでした。

法乗院ステージの総括と岡田翔廣ご住職による法話

すべての演目が終わり、最後に法乗院の岡田翔廣ご住職から今年の下鴨音楽祭についての総括とお話の時間(法話)がありました。

「本日は雨でしたが、雨というのは潤いでもあります。雨も降らないといけないし、我々は水がないと生きていけません。生きるには水も必要ですし、いろんな命をいただいて、食べ物を食べて、栄養をとって生きていかないといけません。音楽は食べ物や水と異なり、生きていくために絶対に必要かと言われたら、絶対に必要ではないかもしれませんけれども、真剣に演じて魂に響くような音であったり、心に訴えかけるような音というのも、人間にとって栄養であり、そういうのも生きていくのに必要なのではないでしょうか」

「私は“妙音”をテーマに琵琶を次世代に継承していく活動をしています。人はいつか死ぬ。死は避けられない。その中で日本の人たちに伝統芸能の魅力を伝えたい。興味を持ってもらい、多くの人たちに良いなと感じてもらいたい。そのような想いをもって活動しています。どうか今後ともよろしくお願いいたします」

といったような内容のお話に心がジーンとしました。

私たちは演奏する場もそうですが、いろんな方々の支えがあって演奏することができています。自分だけで生きているのではなく、多くの人や命、自然によって生かされている。そのことを忘れず、感謝の心を持って、これからも演奏していきたいと思いました。

帰宅後エピソード

帰宅してから三味線のメンテナンスをしていたとき、三味線の棹や胴から法乗院のお香の香りがしました。

今後もいろんな場所で演奏して、いろんな香りを楽器がまとい、そうやって自分の音色ができてくるのかもしれない。ふとそんな考えが頭をよぎる。

人間の寿命は誰にも分からないし、自分も何歳まで生きられるか分からない。けれども、日々感じたことをなるべく記憶して、同じ間違いをすることなく、実践を繰り返す中で、周りと調和しながら、いつか誰かの心に響くような音楽を奏でたいものです。

今回の下鴨音楽祭では、高野山真言宗 法乗院の本堂という厳かな空間で演奏させていただきました。このような素晴らしい機会をくださった関係者の皆さま、準備・運営に携わってくださったスタッフの皆さまに心より感謝いたします。ありがとうございました。

第6回 下鴨音楽祭にて法乗院の本堂で演奏する竹山流 津軽三味線奏者 水山
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