日々のお稽古やライブで使っている太棹の三味線(※以後、津軽三味線と表記)が徐々にカンベリしてきて、ツボ位置を押さえにくくなり、音がビビることも増えてきたため、三味線店に修理に出しました。そのときのことを思い出しながら書いていきます。
カンベリ直しの修理に出す前の津軽三味線
最初に、津軽三味線の修理を依頼する前に、棹の状態をチェックしていきます。

楽器の本体に糸を張ったままだと、棹にあるカンベリの状態がよく見えません。演奏中にカンベリしている所は自分でだいたい分かっているものの、正確に把握するため、糸をゆるめて音緒の側(写真右側)から音緒と糸をセットで外していきます。

糸を外すと、津軽三味線の棹に跡が付いており、まんべんなくカンベリしていることが分かりました。

棹をよく見てみると、表面の漆が剥がれて、紅木の木材が削れている部分もあります。

本来であれば、ここまでカンベリしてしまう前に、三味線の職人さんに修理を依頼するのがベターです。というのも、一番カンベリした部分に合わせて、棹を鉋(かんな)で削って平らにしていくため、カンベリで木材が深くえぐれてしまうと鉋で削る量が多くなり、その結果、棹が細くなってしまうから。
三味線にはギターのようなフレットがなく、糸を押さえた部分が徐々に摩耗していきます。勘所(かんどころ)と呼ばれるツボ位置を押さえることが多いため、何度も同じ位置(勘所)を強く押さえて弾いているうちに、摩擦によって木の方が少しずつ磨り減って凹んでしまう。このように「勘所が減る」という現象が、そのまま「勘減り」(かんべり)という言葉になったそうです。
カンベリしている三味線を修理に出すと、職人さんが棹の表面を鉋で平らに整えてくれます。さらに漆を塗って乾かす作業を何回か行い、時間をかけて丁寧に仕上げることにより、滑らかな棹の状態によみがえります。これらの一連の作業内容のことを、カンベリを直すという意味で、一般的に「カンベリ直し」または「上場通し」(うわばとおし)と言います。
演奏や練習量にもよりますが、棹の表面の漆が剥がれて木材が削れはじめた段階(あるいはその前)で修理に出した方がいいと、以前に三味線店の方からアドバイスをされました。それにもかかわらず放置していたのは、この津軽三味線の棹が硬質であるのと、カンベリ直しの修理代が2~3万円くらいかかるため、ギリギリまで使い倒してやろうと思っていたからですね・・・。
そんなこんなで、京都・祇園エリアにある三味線屋「今井三絃店」で修理依頼をしました。
~約1ヶ月後~
今井三絃店に行き、修理依頼していた津軽三味線を受け取る

カンベリ直しの修理は、棹を削ったあとに漆を塗って乾かす手間があるため、ほかの修理と比べても日数がかかる傾向にあります。人工漆だと乾かす時間が少なくて済むため、1~2週間くらいで修理が完了することもありますが、本漆(100%天然の漆)の場合は、3週間~1ヶ月くらいは想定しておいた方がいいでしょう。
今井三絃店は本漆を使われているとのことで、今回のカンベリ直しの仕上げも本漆でお願いしました。
カンベリ直しの修理が完了した津軽三味線

修理が完了した津軽三味線の棹は、とても綺麗になり、ピカピカに輝いていました。

今まであまり見えていなかったトチの木目も、しっかり浮き出るように。波打つような紋様が美しい。

棹の表面が平らになり、鏡のように物が映りこむのがスゴイと思いました。
ビフォーアフター
パッと見てわかるように、左側がBefore、右側がAfterとなります。

あらためて見比べてみると、結構カンベリで棹が凹んでいたようです。

頻繫に押さえる3・4・6・10のツボ付近が凹むのは分かるのですが、高音のツボも意外と凹んでいて、曲弾きの練習とかで結構使っていたのだなと。

そして今回、職人さんが高度な技で、穴を埋めてくれました。

上の写真だと色の違いが分かりにくいため、ハッキリ見えるように光を当てたのが以下の写真。

このように、穴を埋めて丁寧に修理していただいたおかげで、棹を大きく削ることなく理想的な状態に仕上がりました。

実際に、カンベリ直しの修理が完了して、三味線が弾きやすくなりました。漆を塗り重ねて磨き上げたことで、紅木の表面に鏡のような光沢と指が吸い付くような、それでいて離れが良い独特の滑らかさが生まれています。
ツボ位置を押さえたときも音がビビることなく、スムーズな運指が実現。これでミスをしたら三味線のせいにはできない・・・。大切に弾き込みたくなる「一丁」が復活し、ますますお稽古に励んでいきたいところです。
職人さんに感謝。いつもありがとうございます。